出産を終えてしばらくすると、
「シャンプーをすると髪がごっそり抜ける・・・」
「ブラッシングするたびに大量の髪が落ちる・・・」
「排水口が髪の毛でいっぱいになる・・・」
といった変化に気づく女性は少なくありません。
これは「産後脱毛症」と呼ばれる、出産後に起こりやすい一時的な脱毛の一つです。
大量の髪が抜けると、「このまま髪が薄くなってしまうのでは?」
と不安になるかもしれません。
しかし、産後脱毛症の多くは、妊娠・出産に伴うホルモン変化によって起こる
「休止期脱毛(休止期脱毛症)」であり、
時間の経過とともに自然に回復していくケースが多いことが分かっています。

妊娠中は、なぜ髪が抜けにくくなるの?
髪の毛には、「成長期」「退行期」「休止期」という成長サイクルがあります。
通常は、髪が成長する成長期を終えると、一定期間の休止期を経て自然に抜け落ち、
その毛穴から新しい髪が生えてきます。
健康な人でも毎日ある程度の抜け毛があるのは、このヘアサイクルによるものです。
ところが妊娠中は、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が増加します。
エストロゲンには、髪の成長期を維持する方向に働く作用があるため、
妊娠中は本来なら抜ける時期を迎えている髪が抜けにくくなります。
その結果、「妊娠してから髪が増えたように感じる・・・」
「髪にボリュームが出た・・・」という人もいます。
実際、妊娠中はエストロゲンの上昇によって、髪の成長期にある毛髪が増え、
抜け毛が少なくなることがあります。
出産するとエストロゲンが急激に低下する
大きな変化が起こるのは、出産後です。
出産を終えると、妊娠中に高く維持されていたエストロゲンの量が大きく低下します。
すると、それまで成長期にとどまっていた多くの髪が、一斉に休止期へ移行します。
そして、休止期に入った髪はすぐに抜けるわけではありません。
数か月程度の時間差を経て、まとまって抜け落ちるようになります。
このため、出産直後ではなく、産後2~4か月頃になってから
「急に抜け毛が増えた・・・」と感じることがあります。
つまり、産後の抜け毛は「今、髪に何か悪いことが起きた」というよりも、
妊娠中に抜けずに残っていた髪が、
出産後にまとめて抜けていると考えると分かりやすいでしょう。
どのくらい髪が抜けるの?
産後脱毛症では、ブラシや枕、シャンプー時などに
大量の抜け毛が目立つようになります。
特に髪が長い女性の場合、1本1本の髪が長いため、
実際の本数以上に「ものすごく抜けている」と感じやすくなります。
また、休止期脱毛は頭皮全体に比較的均等に起こるのが特徴で、
円形脱毛症のように特定の部分だけが丸く抜けるのとは異なります。
一般的には、髪の毛そのものが急激に細くなるというより、
「抜ける量が一時的に増える」という形で現れます。
産後脱毛症はいつまで続く?
最も気になるのが、「いつになったら抜け毛が止まるのか」という点でしょう。
産後脱毛症は一時的なものが多く、
抜け毛は通常、数か月程度で徐々に落ち着いていきます。
一般的に、産後脱毛は通常6か月未満で落ち着き、子どもが1歳になる頃までには
髪のボリュームが戻ってくることが多いとされています。
ただし、髪が抜ける期間と、
髪のボリュームが元に戻るまでの期間は同じではありません。
抜け毛が落ち着いた後も、
新しく生えてきた髪が十分な長さになるまでには時間が必要です。
そのため、「抜け毛は減ったのに、まだ髪が薄く見える」と感じることがあります。
これは必ずしも異常というわけではありません。
新しく生えてきた短い毛が増えてくることも、回復のサインの一つです。
産後の栄養不足にも注意したい
産後脱毛症の主な原因はホルモン変化ですが、
産後の生活環境も髪の健康に影響します。
出産後は、育児によって睡眠不足になったり、
食事が不規則になったりしやすい時期です。
また、極端な食事制限によるダイエットを始めると、タンパク質や鉄など、
髪の成長に必要な栄養素が不足する可能性があります。
休止期脱毛は、出産だけでなく、強いストレス、急激な体重減少、発熱を伴う病気、
栄養状態の変化などによっても起こることがあります。
そのため産後は、髪のためにも「早く体重を戻そう」と
無理な食事制限をするのではなく、
肉、魚、卵、大豆製品などからタンパク質を確保し、
野菜や果物、主食なども含めてバランスのよい食事を心がけることが大切です。
髪を強く引っ張らないことも大切
産後の抜け毛が気になると、髪を何度もブラッシングしたり、
抜け毛を確認するために髪を触ったりしたくなるかもしれません。
しかし、産後はできるだけ髪や頭皮をやさしく扱いましょう。
強く引っ張るようなブラッシングや、きついポニーテールなど、
髪に継続的な負担をかけるヘアスタイルは避けることがすすめられています。
ドライヤーやヘアアイロンなどの熱によるダメージにも注意しましょう。
大切なのは、「抜け毛を無理に止めよう」とすることではなく、
自然なヘアサイクルが回復するまで、髪と頭皮をいたわりながら待つことです。
いつまでも抜け毛が続く場合は?
産後脱毛症は自然に改善することが多いものの、
すべての抜け毛が「産後だから仕方がない」とは限りません。
例えば、半年以上経っても大量の抜け毛が続いている場合や、
頭皮の一部分だけが明らかに脱毛している場合、
分け目がどんどん広がっている場合などは、
別の脱毛症が隠れている可能性があります。
鉄欠乏や甲状腺疾患なども脱毛の原因になることがあるため、
抜け毛が長期間続く場合は、皮膚科などの医療機関で相談することが大切です。
産後の大量の抜け毛は「髪がなくなるサイン」ではない
産後に大量の髪が抜けると、女性にとっては非常にショックな出来事です。
しかし、産後脱毛症の多くは、妊娠中に増えたエストロゲンが出産後に
低下することによって、髪の成長サイクルが大きく変化することで起こります。
つまり、妊娠中に抜けるはずだった髪が一時的に残っていて、
出産後にまとめて抜けているという側面があります。
そのため、産後の抜け毛が増えたからといって、
すぐに「薄毛になった・・・」「このまま髪が生えなくなる・・・」
と考える必要はありません。
十分な栄養をとり、無理なダイエットを避け、睡眠や休養をできる範囲で確保し、
髪や頭皮をやさしく扱う。
そして、時間の経過とともにヘアサイクルが整っていくのを待つことが基本です。
出産は女性の身体に大きな変化をもたらします。
産後の抜け毛も、その身体の変化の一つです。
まずは必要以上に不安にならず、自然な回復を見守ることが大切です。
ただし、抜け毛が長期間続く、脱毛の範囲が極端、頭皮に異常があるなどの場合は、
自己判断せず専門医に相談しましょう。

